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塗装 仕上げ

この記事を書いた人

星野勇 有限会社星亀木工所
1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
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家具における木材塗装は、生地が透けて見えるクリヤー塗装と、生地を隠す着色塗装の二つに大きく分けることができます。
生地の美しさをそのまま生かすクリヤー塗装は、ウオールナットやチーク、ナラ、サクラといった、色がきれいで揃いやすい木材によく施されます。
国産家具の塗装はウレタン樹脂を中心とした合成樹脂塗装が主流ですが、最近は塗料や溶剤に含まれる有害物質の影響が問題視され、天然オイルやワックス、ソープなどの自然系塗料を使う動きも見られるようになってきました。

合成樹脂・繊維素系

ポリウレタン樹脂塗装 

現在、最もポピュラーに使われている塗装。乾燥時間が短く、塗膜が硬く、艶があるなど性能に優れており、肉持ちがあることからラッカーよりも塗装回数が省けるといった利点がある。
コストや生産性、日本人が求める仕上がりの良さといった点でバランスが取れているのが人気の理由。ナチュラルな透明塗装が多く、木材の色ムラをステインで均一に着色し、その上に塗膜を作るのが主流。

ラッカー塗装

ラッカーはニトロセルロースを主成分としたもの。色調の明るい透明塗料を「クリヤラッカー」という。柔らかみがあり木質感を生かした塗装ができるのが特長で、無垢材の高級家具に広く用いられている。塗膜が薄いが、その分塗りやすく、短時間で乾燥できるのも魅力。また、溶剤で塗膜が溶けやすいため塗り直しや傷の補修がしやすい。

エナメル塗装

エナメルはワニス(天然・合成樹脂を乾性油と共に加熱、溶解して乾燥剤を加え、塗装しやすいように溶剤で薄めたもの)で顔料を練ってつくった塗料の総称で、不透明塗料のことを言う。
ワニスの代わりにボイル油で練ったものを「ペイント」といい、ラッカーでは「ラッカーエナメル」、ウレタン樹脂を使用すれば「ウレタンエナメル」となる。

UV塗装

UVはウルトラバイオレットの略。紫外線硬化塗料ともいう。塗料の中に光と反応しやすい物質が入っていて、紫外線を当てると数秒で硬化するように作られている。硬い塗膜を活かして、学習机やテーブルの天板に使われることが多い。
傷がつきにくく、耐薬品性も高いが、塗膜が硬いので伸縮性のある無垢材の家具には向かず、修復もむずかしい。

自然系

オイル仕上げ

自然な肌触りでしっとりとした光沢が得られるオイルフィニッシュ。使われるのは亜麻仁油(リンシードオイル)、桐油(タングオイル)、ボイル油(植物油に空気を吹き込んで加熱し、乾きやすい性質を与えたもの)など。また、若干の樹脂や香料、着色剤、乾燥剤などを加えた市販品もある。素地に浸透させながら研磨し、研ぎかすを目止めとして木目に充填、凝固させる。ただ、耐水性や耐汚染性は弱いためワックスがけなどのメンテナンスが必要。

ワックス仕上げ

ワックスの原料となるのは蜜ロウ、木ロウ、パラフィンロウなど。桐たんすの仕上げに使用されるイボタロウは、イボタの木につくカイガラムシの分泌物が原料。これらを溶剤で溶かしてクリーム状や液状にして木材面の保護や艶出しに用いる。

ソープ仕上げ

基本的にはワックス仕上げと同じ。ワックスの代わりにソープ(せっけん)をすり込んで仕上げる。白木の風合いをそのまま生かしてさっぱりとした感触になるのが特長。ソープ仕上げの家具にハンス・ウエグナーのYチェアーがあるが、テーブルの場合は耐汚染性が弱いためか、日本人にはあまり歓迎されない傾向があるようだ。しかし、オイルフィニッシュ、ワックス仕上げと同じように定期的なメンテナンスをすれば、使い込むほどに味が出る。

参考文献 

隔月刊インテリア・マガジン「コンフォルト」2000.12

ウッドテクニカラーバイブル

オイルフィニッシュのサンプル帳