椅子職人の手道具

この記事を書いた人
星野勇 有限会社星亀木工所1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
道具は、各自で買い、各自で作っていました。
全身を使って削り作業
近年は、機械化が進みどの様な業種でも昔ながらの手道具を使う場面が少なくなりましたが、少量生産の特注家具製作の世界ではまだまだ手道具が活躍しています。
椅子の加工作業では、猫足と呼ばれる複雑な形状の脚や、肱掛椅子の肘掛部分など、曲線を活かすデザインの仕様が多く、特殊な鉋類が必要となります。その複雑な形状の材料を職人たちは特殊な鉋と足の指先とお腹で挟み込み、器用に曲線を削ってゆくのです。
他の木工職人でも、扱う製品によってそれぞれ、独特な道具を使っています。たとえば木桶を作っている人、組子を作っている人、彫刻加工などに携わっている人など、その道では、絶対に必要な道具・刃物ですが、その刃物を作っている職人がいるわけですが、そのニーズが減り存続が危ぶまれているのも現実です。
昔から自分の道具は、毎月の手間賃の中から少しずつ増やして行くのが一般的でした。見習いは最初は、親方や先輩の道具を貸してもらい覚えて行きました。1990年代ぐらいまでは、小さな工房には道具屋さんが時々回って来て、鉋や鋸など買い足し、他の工場の情報など聞いていたようです。
特注家具の椅子職人は、物件の度に図面の指示によっては面取り鉋を曲線に合わせて新たに作らねばならないので、道具箱の中は小さな鉋でいっぱいになってきます。また、その変わった形状の刃物を研磨する砥石も、ただ平面だけでなく刃物に合わせて変形しています。
伯父の話では、削り仕事が職人の優劣がハッキリ分かる場面だったようで、如何に早く、きれいに、そして逆目を止めるかで、それぞれ各自でいろいろな工夫して鉋台の口や裏金の角度など絶対に他人には教えなかったそうです。本当によい鉋やノミなどの道具は、見習いの若い人に見られないように毎日革の袋に入れて持ち帰ったそうです。

南京鉋のいろいろ

豆カンナ 出丸・内丸・面取り