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椅子張りについて

この記事を書いた人

星野勇 有限会社星亀木工所
1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
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木材と異素材との組み合わせの代表的な例が椅子張り加工だと思います。座り心地の決定打です。

椅子張りの流れ

張りぐるみと言われているソファーを例にすると、生地屋と呼ばれている木工職人が木枠部分をつくり、それを元に張屋さんと呼ばれている張り職人が下ごしらえをして形を整えてゆきます。

昔は、座面や背面に力布を縦横に張り、コイルスプリングを置き、麻紐をからげて連動して動くようにします。時間が経ってもばらけないようにしっかりと結びつけなければなりません。その後、連結バネという製品が出てきましたが、現在はあまり使われていないようです。最近では、ポケットスプリングという製品が流行しているようです。

座面や背面の詰め物としては、昔はワラや綿、馬毛、シュロなどの自然素材が主流でした。椅子張りの特長として台輪の上に土手という麻袋をほぐしたテープ状の布の中にワラを巻いてタコ糸のような太い糸で真ん中を絞り硬いひょうたん形にして、座面や背面の角(稜線)をつくります。しかしなかなか同じ太さで長い距離を作るのは熟練が必要でした。

布地の裁断は親方の仕事で布地の裏表、方向性を見てハサミを入れます。また、大きな柄物の場合は、中心部分を見極め座面の中央にセットしたり、縞模様なども、背裏から背表、座面にかけて模様がずれないように神経を使います。

次が縫製です。ミシン掛けも親方などがやるところが多いようです。直線縫いの様に単純な線は出来上がった時に、その品物の評価が素人目にもわかってしまうので気が抜けません。
第二次世界大戦後、石油化学製品が普及して、椅子張りの内部はほとんどがウレタンフォームになっています。クッション性を良くするために、反発力の違うものを二重、三重に組み合わせて繊細な座り心地に配慮しています。

椅子張り職人は、身体が細くても手は節くれだったゴツイ手をしています。張地がたるんだりシワをとったりするために、常にギュギュウ引っ張ってタッカーで固定するので、握力が必要なのです。現在は、張地を固定するのにエアー工具のタッカーを使いますが、1970年代ぐらいまでは、長さ10ミリぐらいの釘を口に入れ、張加工独特の先が磁石になっている小さなハンマーで、ハンマーの先を口に運び、釘の頭をぺたんとくっつけ一発で打ち込むのです。これを熟練の職人は機関銃のように連続して打ちつけるのでした。

張り職人は、骨組みだけの素の状態から肉付けをして、表面にきれいな張地や革を張り、最後の化粧をすることなので、作業をした人の丁寧な仕事やセンスが問われる大事な工程です。

張り替える

 

長年にわたって使ってきた愛着のある椅子やソファーの張り替えって出来るのでしょうか。
ホテルやレストランの椅子も4年から5年サイクルで張り替えを行っています。家庭用の椅子やソファーも張り替え張り替え可能です。

買った当時の張地品番をそろえるのは難しいかもしれませんが、各メーカーのサンプル帳から選んでもらえれば、新品同様になります。
藤張り仕様も張り替え可能です。

ファブリックサンプル帳例