特注家具製作依頼は敷居が高いか

この記事を書いた人
星野勇 有限会社星亀木工所1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
一般的に特注家具製作は値段が高いイメージですが、本当に高いのでしょうか。大量生産、既製品とは違うということはわかっているが、その中身や特注品の意味することについて考えてみたいと思います。
お客様のお悩みやご不便、困りごとをお聞きし、対話の中から解決策を見つけだす事が注文家具の本質だと思います。
値段の中身について
昨年、市内のお客様から、娘さんがHPで対応してくれるところを探して、連絡をいただきました。ペットがソファーにおしっこをして、においがすごいので、このソファーを破棄して、新しく全て木でできた長椅子を作ってほしいとのお話しでした。
さっそくお宅に伺い、どんな状況なのか、どのようなご希望かをお聞きし、大きさ等の寸法を確認しました。
後日、3パターンのスケッチと見積書を作って、打合せに訪問しご検討していただき、何回か修正を加えながら打合せを重ねました。結論をいただき正式発注となり、お支払いの件もご確認いただき、作業開始となります。
作業に入る前に原寸図を作図して、仕口の検討、確認をして木取り、加工作業に入ります。同時に塗装サンプルを用意して、お客様に確認をいただきます。完成後も塗料のにおいを飛ばすために約1週間ぐらい工場にとどめておきます。
そして、お客様のご都合を確認後納品となります。
このように既製品を仕入れて即納品するのとは違い、そのお客様の為だけに、時間と労力をかけていることをご理解していただけますでしょうか。
特注家具のよさ
お客様のお悩み、ご不便、困りごと、またはもっと便利に、快適に暮らしたいなどのご要望を対話の中から、糸口を見つけだし、自分たちの経験値とアイデア、そしてネットワークを駆使して対処します。
材料の選択、強度面に対しての対策、仕上りに対しての見極め、それらは普段、図面上に明記されているので、それにしたがって仕事を進めていますが、特注品は、いろいろな段階でお客様が選べる楽しさを味わいながら進めていきます。
ご希望があれば最終工程のオイル仕上げなどの作業を体験してもらうこともでき、さらに愛着を持つキッカケになると思います。
工場に来ていただき、出来上がった製品だけ見るのではなく、直接大きな材料や、作業工程を見ていただき、貴重な天然資源を大切に使用するためにも、木材の良さと欠点をご理解いただき、ユーザーとメーカーの対話のキッカケになればと思います。
連絡を入れると、注文しなければならないかと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、日常的に見積もり依頼があり、提出しても受注するのは、ほんの一部に過ぎません。
ですから、気軽にご不便を感じていることを相談して見てください。そして、少しでも快適な住空間を手に入れるお手伝いができればと思います。

個人宅に納めた長椅子

前期高齢者の肘掛椅子