木の話

この記事を書いた人
星野勇 有限会社星亀木工所1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
木材は、どのようにできているか

道管の特徴的な見え方3種類
木材には「針葉樹」と「広葉樹」がある。針葉樹は構成する細胞の大部分が「仮道管」であり、材表面に現れる木理も比較的単純なものが多い。
広葉樹材は「道管」、「木繊維」、「柔組織」などの細胞構成がより複雑である。樹種により「放射組織」の比率が異なり、単列、多列、さらには広放射組織と呼ばれる幅広のものがある。
放射組織は、特に柾目において独特の模様や光沢となって現れる樹種があり、配列には大きく分けて3種類あり、木口面で見て道管が年輪に沿って配列する「環孔材」(ケヤキ、クリ、ナラ、タモ、キリ、セン、チーク等)、全体に分布する「散孔材」(ブナ、カバ、ホオ、サクラ、シナ等)、
中心から放射方向に配列する「放射孔材」(シラカシ等)がある。
木材は、どのようにできているか

木材の細胞壁構造と化学組成
木材の細胞壁は図1のように層構造になっており、1次壁、2次壁及び細胞と細胞の間は細胞間層と呼ばれるリグニンの割合が多い層により結合している。細胞壁の骨格をなすのは「セルロースミクロフィブリル」と呼ばれる直鎖状のセルロース分子が束になった糸状の結晶構造物である。
すなわち、木材の細胞壁を建物に例えると、セルロースミクロフィブリルが鉄筋となりこの周りのリグニンはコンクリート、ヘミセルロースが鉄筋とコンクリートを繋ぐ緊結材となる。各細胞壁は中空状の層構造を持つパイプの集合体であり、木材はこのパイプが様々なかたちで構成された材料である。
木材が軽くて強いといわれる原因は、
①分子鎖が高度に配列し、
②結晶性のナノ繊維が合理的に配列し、
③鉄筋コンクリートの様に複合化することにより、
④軽くて強い中空パイプ構造を持つためである。
表面の表情について
木材はその切り方によって3つの断面(「木口(こぐち)」、「柾目(まさめ)」、「板目(いため)」、
が現れる。各面で年輪や繊維、放射組織などの細胞の現れ方が異なるため、木目も異なってくる。
板目面では、樹皮に近い面を「木表(きおもて)」、中心(髄)に近い面を「木裏(きうら)」と呼ぶ。
樹木は毎年あるいは季節ごとに肥厚成長し、「成長輪(年輪)」を形成する。1年輪は、春季に形成された密度が小さい「早材(そうざい・春材、春目)」と、夏季に形成された密度が大きく色の濃い「晩材(ばんざい・夏材、夏目)」構成される。
丸太の横断面を見ると、ほとんどの材が中央部は濃色で周辺部は淡色であることに気づく、濃色の部分を「心材(しんざい)」、淡色の部分を「辺材(へんざい)」と呼ぶ。
参考文献
「手づくり 木工大図鑑」 田中一幸、山中晴夫監修(2008年)
「木材工業ハンドブック」(改訂4版) 森林総合研究所監修(2004年)
「日本有用樹木誌」 伊藤隆夫他著(2011年)