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木の思い出

この記事を書いた人

星野勇 有限会社星亀木工所
1951年生まれ、私立越生高校木材工芸科卒業、有限会社星亀木工所入社。
父の下で、数々の物件の仕事について従事してきました。
第2回暮らしの中の木の椅子展入選
第3回暮らしの中の木の椅子展入選
2008年「あぐらいす」GOOD DESIGN受賞
公益財団法人 埼玉デザイン協議会正会員
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長年木工の仕事に携わってきましたので材料との思い出をお話させてください。

国産材

①ヒノキ

美容関係のお客様からの依頼で、ヒノキ材を使用することになり、飯能市のグリーンスマイルさんにご紹介して頂いた石原製材さんよりB級材の端材を分けていただき製作しました。
ご存知のように削ると独特の香りを発します。削り肌もきれいで心材(赤身)は鮮やかなピンク色をしています。節有材ですが、生節も欠点にはならず個性として輝いています。

②カシ
鉋の台や玄能の柄など、仕事で製品を作るよりも、道具を作る大事な材料です。木肌は白くつるっとしていて、硬く、重たいが特長ですが、国産材の中では一番硬い材料です。その特長を活かして、昔は自動車のボディや、農機具の柄などに使われ、現代でも木刀や拍子木として使われています。

③クルミ

切削した当初は薄いピンク色に近く、時間が経つと薄い褐色になる。加工性も良く、削り肌もきれいです。以前に、村野藤吾事務所からの図面の仕事で、横浜プリンスホテルのメインダイニングの椅子に、クルミ材が使われ、こんなに軽くて美しい材が存在するのかと、この時初めてクルミ材の存在を知りました。切削抵抗も少なく、作業しやすいのですが、華奢なデザインの椅子だったので強度面が心配でした。
また、その軽さを活かして、市内にある県警音楽隊のカラーガード隊が使用するライフル銃型のバトンを製作依頼されたこともありました。

④クリ
当社のオリジナル製品は、全て岩手県産のクリ材を使用しています。クリ材は、国産材の中ではある程度の量が確保できる数少ない樹種です。加工性も良く、木目はやさしい表情をしています。クリ材は、京浜島にあった中原ハウスの中原さんに教えていただき使うようになりました。
昔は、鉄道の枕木などに盛んに使われていたそうです。現在は、熱伝導率が良いことからフローリング材として重用されています。

⑤ケヤキ

ケヤキは、街路樹としてよく目にする木ですが、生活の中で身近に感じられる木で、比較的に入手しやすい材なので、昔の農家の大黒柱や上り框、餅つきの臼、杵、太鼓の胴、器などに使われて、大木は神社やお寺の柱、梁、彫刻などに見ることができます。このように建築から生活雑貨に至るまで親しまれている木ですが、農家の庭先にあるケヤキは、硬くて心材は、緑がかっていてあまり良質とはいえず、やはり東北、宮城県地方で産出する材が価値があるようです。
ケヤキは、椅子の材料としてはあまり使われる機会は少ないようですが、過去に羽田空港の貴賓室の椅子を納品した事があります。

⑥ブナ

ブナ材は、昔はソファーなどの張りぐるみの木枠などに使われ、比較的安価な材料として広く使われていました。入手しやすいということで、廉価版のダイニングチェアーや図書館の閲覧椅子など、当社でも盛んに製作していた時期もありました。樹皮がついたままの材などの中には、時々、皮をはがすと白い大きな虫がいて大きな穴が開いてて粉がいっぱい出てきました。
かつては東北六県から産出する材が主力であったが、現在は、ヨーロッパ産のビーチ材が広く使われています。

⑦マカンバ

椅子の材料として1990年代ぐらいまでは盛んに使われ、家具関係者の間ではサクラ材としてまかり通っていました。高級材なので、ブナ材の廉価版の高級バージョンとして使用されていました。
心材は淡紅褐色で、地味な感じですが品のあるステキな材です。宮内庁からの仕事は、マカンバの指定が多かったと思います。
木材が均質で硬くて、耐摩耗性に優れている点などから体育館の床材などに広く使われています。
靴の木型や化粧単板は、内装材として用いられています。

⑧ミズナラ

家具材としては、一番馴染みのある材料です。削ると、あー、ナラを削っているなーと思うのはナラ特有のニオイがするからです。手押しかんな盤で作業中に、思いがけない「とらふ」と呼ばれる杢の入った材を見かけると、思わず口角があがります。また、夏場の暑いとき、削り仕事をしている時、アクが手に染み出し黒くなります。組み立ての時に、余分なノリを拭き取る際に、吹き残しがあると、後で青紫色のシミが残ることがあるので気を付けて確認しなければなりません。
戦前は、ヨーロッパなどに輸出され良材として評価されたようです。

⑨セン

椅子の材料としては使われる機会は少ないですが、ホテルの和風レストランで使用する脇息を納品したことがあります。心材は灰褐色で幅広い材が入手しやすく、狂いも出にくく、和家具などによく使われるようです。

輸入材

①メープル

メープルは白くて、非常に密な感じで硬く強い印象です。散孔材なので削り肌はツルツルして石のようです。出来上がった椅子の雰囲気は、他の材料の品物よりもシャープな感じです。
メープルが有名なのは、メープルシロップと木理が不規則な模様をつくりだす鳥眼杢(バーザイメープル)は、バブル期には、大変もてはやされた。家具だけでなく、内装材にも盛んに使われていました。

②ホワイトアッシュ

スツールの脚部などによく使っていたが、ある設計事務所からの依頼で、日光江戸村の施設で、ベンチを作ることになり、アッシュを使うことになりました。長い材が入手しやすい事や加工性も良いことから使用しました。タモ材とよく似ていますが、タモ材よりも色が明るいので、塗装するとモダンな雰囲気を醸し出します。

③ブラックウオールナット

高級材の代名詞であるウオールナット材ですが、私が初めてであった頃は削ると切削面が赤紫色になり、本当にきれいでした。現在の材は色が薄くなったように思われます。加工性もよく仕上げにオイル塗装をすると、さらに鮮やかに深みを増します。
他の用途としては、キャビネットや銃床などがあるます。

④ホワイトオーク

近年、ナラ材が枯渇し、高騰しているので代替え品として広く使われています。北米産でウイスキーの樽などに使われています。欧米の高級家具材として高く評価されていますが、収縮率が大きく乾燥の際には、狂い、割れが出やすいので、木取り・加工後に干割れの症状が出やすいので気を付けなければならない。

⑤チーク

世界的な銘木の一つで、日本では、バブル期前までは、高級材と言えばチーク材でした。
特有のマシンオイルのようなニオイがします。刃物にロウ状のヤニがこびりつき、切れ味が落ちます。オイルショック前後は、チーク材の仕事が多く、刃物の研磨を頻繫に行っていました。
近年は、価格の高騰しているのも原因ですが、見かけることが少なくなりました。

⑥マホガニー

世界の銘木の一つで、色を形容する言葉にマホガニー色があり言葉だけはよく知られていると思いま

す。マホガニー材も産地により呼び名もいろいろありますが、一番よく知られているのは南米のホンジュラスマホガニーですが、現在は、ワシントン条約の絶滅危惧種附属書Ⅱにあります。現在では、過去に購入した在庫分しかありませんが、限りある資源を大切にしていきたいと思います。

ハードメープル

 

ケヤキ

ウオールナット 
               (株)エビハラ  ツキ板樹種サンプル帳より